COLUMN|puru.

第四回「リバタリアニズムについて」

コミュニタリアニズムを取り上げた第二回からだいぶ時間が経ってしまい、しかも今回は「共通善」について掘り下げる予定だったのを、急遽予定を変更して「リバタリアニズム」について取り上げてみようと思う。

この言葉を知るには、まずは、政治的には民主主義、経済的には資本主義としての基礎となっている「リベラリズム」「自由主義」という大枠で、いくつか抑えておくべき事項がある。

その1つが、社会保障や公共事業など政府の介入を推進し、社会的構想を重視した英の労働党やニューディール政策などに代表される「大きな政府路線」の諸思想及び諸政策であり、「社会的自由主義」などとも訳される「ニューリベラリズム(社会的自由主義)」。

そしてそれに対し(主に1980年代以降から呼ばれている)ケインズ主義を批判し「政府による介入を最小限に」といった、考え方がある。これが「ネオリベラリズム(新自由主義)」である。これはいわゆる「小さな政府路線」の市場原理主義の経済思想である。特徴は福祉や負担は最小限に。原則自己責任を基本として小さな政府を推進し、公共サービスなどを縮小、公営事業の民営化、経済の対外開放、規制緩和による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策を行う。(国内では小泉内閣の政策がこれにあたる)

上記2つを押さえた上で、あらためて自由主義について説明をすると...人間の自己決定権を尊重し、政治や経済における多元主義(国民の興味関心や信念の多様性を認めること)の立場を取るのが自由主義であり、上記ニューリベラリズムに対して本来の自由主義的な意味合いを強調しているのが「リバタリアニズム」であり、更にはジョン・ロック、アダム・スミスらが主張していたような、人間の合理性や個人のあらゆる権利を強調した(古典的自由主義を重視する・評価するという表現を用いる)のがネオリベラリズムである。

渋沢生悟さん

リバタリアニズム自体が自由主義からはじまっているので、その成り立ちから入らずに、リベラリスト・リバタリアン・コミュニタリアン...のように主張する者の"総称"から入ってしまうと、自由主義という括りの部分での線引きで混乱してしまうこともあるが(まぁ実際は政策ベースで切り分けると分かり易いが)、こうして成り立ちから押さえると多少は違いが分かり易くなると思う。ただ、実際はリバタリアニズム自体が自由主義からはじまっていることもあり、「自由意志主義」「自由至上主義」「古典的自由主義」...と多数の呼び方(訳し方)が存在し、日本語的に起源である自由主義との区別をしているらしいが、こういうことがあるので、余計にややこしく感じてしまうのは気のせいだろうか...。

ちなみにリバタリアンの説明を平たく言うと...レッセフェール(自由放任主義)を唱え、個人の権利を尊重し、経済や社会に対する国家や政府の介入を否定もしくは最小限にすることを主張する人たち、自由市場を重んじる主義者。というような言い方になるのだが、実際はそれ以上「これがリバタリアニズムだ!」というような細かい説明、定義は難しく、それ自体も「市場重視の右派リバタリアニズム」と「社会的公正重視の左派リバタリアニズム」に分かれていたり、実際はリバタリアンの中でも意見の相違があるということを抑えておく必要がある。

まぁこのあたりを掘り下げ始めるときりが無いので、最後に現代のリバタリアニズムについて、それらを分類する2種類の指標を3パターンずつ紹介する。

一つ目は「国家の規模」についての3パターン。A.国家を廃止するという立場である「無政府資本主義」、B.国家を廃止しないまでも、国防・裁判・治安維持といった部分に限定し国家の役割を最小限にとどめようという「最小国家論」、C.ある程度の福祉やサービスを国民に提供する小さな政府を許容する前述の「古典的自由主義」。

渋沢生悟さん

二つ目は「個人の自由の正当化の根拠」についての3パターン。1.自然権にそれを求めるもの、2.帰結主義にそれを求めるもの、3.契約論に求めるもの。自然権とは、政治体を構成しないバラバラの人間達が生むであろう、人間間の様子を主に指す。帰結主義というのは功利主義を歴史的起源に持った「自由を尊重するほうがよりよい社会を作れるはずだ」というような、行為から生じる結果を考慮する立場のことを言う。リバタリアニズムはこれら3パターン×3パターン=9種類に分類され、概ね当てはめることが出来る。ベーシックインカムという言葉をブログなどで耳にすることも多いと思うが、一部のリバタリアンの主張のひとつであるこのベーシックインカム についても機会があれば取り上げてみたいと思う。

というわけで、今回はここまで。次回はコミュニタリアニズムに再び戻って、「共通善」について掘り下げるところから再び始めたいと思う。

参考文献:藤原保信「自由主義の再検討」、小川仁志「はじめての政治哲学」、大塚桂「政治哲学入門」


PROFILE

渋沢生悟さん

渋沢生悟(しぶさわ しょうご)
NGO Freedomwing代表。
Web関連企業で働きながらNPO・NGO方面でも活動中。ベンチャー企業での経験が長く、紙媒体の制作、WEB制作、経営企画、CSR、WEB広告(主にSEM)を経験。NPO・NGOについては今年で4年目。元々は開発途上国の子ども達への支援(教育分野)と国内の地域活性化がキッカケ。現在は世界各国の紛争、現代史、政治哲学、国連etc...というようなキーワードで勉強中。チェ・ゲバラをリスペクトする30歳。家族は妻と娘1人。元役者で映画好き、元ゲーマーでゲーム好きという側面もありTwitterでのツイートはついつい話題が拡散しがち。

Bloghttp://freedomwing.tumblr.com/archive
twitter公式アカウント@CHE_SS
Facebook:Shogo Shibusawa


第三回「ソーシャルメディアとそこで出会った全てのものに"ありがとう"を言うために」 

  • puru.の歩き方
  • 藤沢実果の世界の街角から
  • 頑張ってる女の子大募集!!
  • twitter × puru.
  • puru.のRSSを購読する

SNAP Archives

#017 春山あこ
2012.04.10 [Tue]
#016 厚澤真央
2011.02.19 [Sat]
#014 LEONE
2010.11.18 [Thu]

›› 一覧を見る


PAGETOP